「もっともっと欲しい」の貪欲の経済から、「足るを知る」知足の経済へ。さらにいのちを尊重する「持続の経済」へ。日本は幸せをとりもどすことができるでしょうか、考え、提言し、みなさんと語り合いたいと思います。(京都・龍安寺の石庭)
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知足の思想をどう広めるか?
貪欲から知足へ大転換を(つづき)

安原和雄
 私は07年2月20日国際文化会館(東京・港区六本木)で開かれた「グローバルジャパン特別研究会」(米欧亜回覧の会=泉 三郎理事長=主催)で「貪欲から知足へ大転換を―仏教経済思想に立って」というテーマで講話した(その内容は「貪欲から知足へ大転換を」と題して、07年2月22日仏教経済塾に掲載)。引きつづき講話をめぐって約1時間、活発な質疑応答が行われた。その〈Q&A〉の趣旨を以下に紹介したい。(07年2月25日掲載)

▽知足の思想を若者たちにどう広め、理解して貰うか?

Q 知足という考え方は今の時代に必要であり、これをぜひ広く普及させたいと考える。日本に昔からある考え方で、高齢者の間ではそれなりの理解があり、受けいれられやすいと思うが、若い人たちにはどうだろうか。果たして受けいれられるのかどうか、そこが気になるところである。どうしたらよいか。

A ご指摘の通りで、結論を一口にいうと、このまま貪欲路線を突っ走って、もう一度日本は滅びる以外にないのかな、という印象、思いもある。小泉純一郎前首相は「自民党をぶっ壊す」と言った。これが大きな反響を呼んだが、安倍晋三現首相の場合、日米一体化路線をこのまま進めば、「日本をぶっ壊す」結果となり、非常に危険な人物になるのではないかという危惧がある。

 安倍政権は教育基本法はすでに改悪したし、やがて憲法9条も改悪して、正式の軍隊を持ち、「世界の中の日米軍事同盟」の一翼を担って海外派兵も辞さない方針である。これは世界の中で孤立するほかない選択であり、これをどう避けるかが大きな課題である。
ここで見逃せないのは、若者たちの間にも時代を見据えた考え方がみられることである。悲観一方になる必要もないような気もする。

 以前、慶応大学で「いのちの尊重と仏教経済思想ー地球環境時代に生きる智慧」というテーマで講義をしたことがある。講義を聴いて書いた学生の感想文によると、女子学生の一文に「仏教経済思想は初めて聴いたが、これからの時代に合っている」とあった。概して女子学生の感想文に未来に生きる意欲を感じさせるものが多かった。私は「21世紀は女性の時代」という印象を抱いている。

 それに私は歴史は激変するということを時折考える。個人の経験からいうと、東西ドイツを分断していたベルリンの壁が崩壊したのが1989年で、その前年に西独政府の招待でベルリン等を訪ね、政府関係者に「東西統一の可能性」について聞いたことがある。その答えは「近い将来とても考えられない」だったが、1年後にベルリンの壁が壊れ、やがて統一も実現した。大方の予測を超えるスピードで歴史は望ましい方向に激動したのである。

 日本の歴史をみても、激変の具体例は少なくない。幕末に坂本龍馬らがいち早く幕藩体制の崩壊を予測し行動したが、それは民衆多数派の支持があったからではない。また太平洋戦争の敗北後に平和憲法体制ができることを戦争末期に日本人の誰が予測しただろうか。
 要するに時代の変わり目には多くの人々にとって予見できない、予想外の事態が発生して新しい時代に変化すると、急速に少数派が多数派に変化する。知足への自覚と実践も急速に広がる可能性もあり、そう悲観する必要もないようにも想う。

▽少子化問題は仏教経済思想ではどう理解するのか?

Q 少子化によって日本人口が減少するという予測が一般的になっている。少子化が進むと、労働人口の減少のほか、高齢者に対する若年層の比率が低下し、高齢者の年金を誰が負担するのかなど問題が少なくない。仏教経済思想ではこの問題をどう考えるのか。

A これは仏教経済思想が家庭や仕事をどのように考えるかという問題とつながっている。柳沢厚生労働相が女性を「子どもを産む機械」と発言して批判を浴びた。この「機械」発言は論外であるが、仏教経済思想は家庭の役割を重視していることを指摘したい。
 ドイツの経済思想家、シューマッハーの著作『スモール イズ ビューティフル』(講談社学術文庫、原文=英文は1973年刊)は仏教経済学を論じながら次のように述べている。

 「会社や工場で婦人が大規模に雇用されているのは、経済運営の重大な失敗のしるしとみられる。とりわけ幼い子どもを放任して、母親を工場で働かせるのは、熟練労働者を軍人として使うのが現代経済学者の目に不経済に映るのと同様に、仏教経済学者からみて不経済である」と。

 いいかえれば仏教経済思想は女性が子どもを産み、育てることは女性にとって誇るべき偉大な仕事であると理解している。この点は男性にとっては逆立ちしても女性には敵わないところである。いうまでもなく仏教は男女平等の原則を堅持し、女性の社会進出も是認し、歓迎する。さらに夫婦そろって子育てに取り組むことも重要だと考える。しかし他方で男女それぞれの特性、差異をも重視する。

 さて仏教経済思想は仕事をどのようにとらえているか。著作『スモール イズ ビューティフル』は、仕事の役割について仏教的観点から次の3点を指摘している。
①人間にその能力を発揮・向上させる場を与えること
②仕事を他の人々と共にすることを通じて自己中心的な態度を棄てさせること
③まっとうな生活に必要な財とサービスを造り出すこと

これが人間を生かす仕事本来の望ましい姿といえよう。しかし現実は大きく異なる。同著作は次のように述べている。
 「仕事を労働者にとって無意味で退屈で、いやになるような、ないしは神経をすりへらすようなものにすることは、犯罪すれすれである。それは人間よりもモノに注意を向けることであり、慈悲心を欠くことである」と。
 文中の「人間よりもモノに注意を向ける」の「モノ」の代わりに「利益」を置き換えれば、成果主義、サービス残業、労働強化を背景に過労死、ノイローゼ、転職が多発している我が国昨今の職場実態と余りにも似通ってはいないだろうか。

 少子化に伴う人口減少に企業などが懸念を抱いているのは、労働力不足となって、賃金コストの上昇を招くからだろう。労働力過剰の状態がつづけば、失業者は高水準となり、それが賃金や労働条件の低下、悪化をもたらす誘因となる。これが競争激化、弱肉強食を必要と考える自由市場原理主義者たちの望むところだろう。しかしこのような利益中心の企業の都合を優先させて、少子化、人口減少問題を取り上げるのは適切ではない。

 もはやかつての戦前のような「産めよ、増やせよ」という時代ではない。自己決定権は夫婦にあり、結果として人口減少となっても、それを問題視するのはおかしい。年金問題は、企業の定年延長などによって元気な高齢者に就業機会を保障すれば対応できるのではないか。
 ただ子どもを産みたくても産める社会的環境にないという背景からくる昨今の少子化問題は、決して好ましいこととは考えない。

▽中国、インドの高度経済成長路線をどう考えるか?

Q 最近の中国、インドの経済成長、経済発展はすさまじいものがある。まさに貪欲路線を突っ走っているといっても過言ではないだろう。日本だけがいくら貪欲から知足への大転換を図っても、この両国が路線を変えない限り、効果は期待できないのではないか。このままでは地球も人類ももたない。

A まさにご指摘の通りだと思う。2020年のGDP(国内総生産)は中国が米国を抜いてトップに躍り出るし、インドは日本を追い越して3位に急上昇するという予測もある。この両国は人口大国(中国人口13億人、インド人口10億人)であり、かりに米国並みの消費主義にとりつかれたら、地球環境破壊が深刻になるのは避けられないどころか、地球がいくつあっても足りないとさえ言われている。

 ただ若干の救いがあるのは、中国自身が環境問題の深刻さに気づいて、対応策に乗り出そうとしていることだ。それぞれの国が自国の針路のあり方、そして路線転換には責任を持つべきだろう。日本としては率先垂範を実践すべきで、貪欲から知足への大転換の日本モデルをつくりたい。それを日本の責務と考えたい。

 問題は米国ではないか。ブッシュ政権になってから、地球温暖化防止のための国際取り決めである京都議定書へのサインを拒否し、離脱した。貪欲そのものの身勝手な振る舞いで、ここから米国の世界の中での孤立化が顕著になってきた。軍事力依存症のブッシュ政権が歴史の大道をいかに踏み外しているかを世界に印象づけたともいえる。

 ただ米国内にも期待すべき要素はあちこちにみられる。一例をあげれば、米国ワールドウオッチ研究所編『地球白書2004~05』(家の光協会)が「知足の心」の重要性を説いていることである。次のように指摘している。

 「消費者の選択とは、個々の生産物やサービスの間の選択ではなく、生活の質を高めるための選択を意味する。個人にとって真の選択は、消費しないことの選択も含まれる。すべての人は重要な問いの答えをみつけることを学ばなくてはならない。それは〈どれだけあれば足りるのか〉という問いである。考慮に値する一つの指針は、中国の哲学者、老子の〈足るを知る〉という教えである」と。
 貪欲なブッシュ政権の面々に比べ、知足、簡素を尊び、実践する市民レベルの消費行動が米国内で静かに広がりつつあることに目を向けたい。

▽人口急増、飢餓、貧困に悩む発展途上国での知足のあり方は?

Q 世界全体の人口は急増している。主として発展途上国での急増で、先進国の多くでの少子化現象とは対照的である。しかも発展途上国では飢餓、貧困が広がっている。こういう状況下では知足はどう考えたらよいか。

A 飢餓に苦しむ人々は発展途上国を中心に世界全体で8~10億人といわれる。全世界で7人のうち1人は飢餓に苦しんでいる。しかも貧困に陥っている状態ではもちろん知足は必要ではない。
 貪欲を否定し、一方、知足を是認し、勧めるといっても、何を基準に貪欲あるいは知足を判断するか、ここが問題である。政策論として考える場合、単に欲望のあり方として「知足=これで十分」、「貪欲=まだ足りない」と認識するだけでは心の問題、精神論の域を出ない恐れがあるだろう。

 私は「持続的発展=持続可能な発展」(Sustainable Development)を示す多様な条件を客観的な判断基準に据えて、それを否定したり、はみ出すのが貪欲、一方それを肯定したり、その範囲内に収まっているのが知足、と捉えるのが合理的ではないかと考える。

 持続的発展の内実を示す多様な条件のうち、いくつかをあげると、次のようである。
*地球上の生きとし生けるもののいのちの尊重
*長寿と健康な生活(食料、住居、健康の基本的水準)の確保
*基礎教育の達成
*就業機会の保障と人的資源の浪費の解消
*特に発展途上国の貧困の根絶
*経済成長それ自体を目標にする呪縛からの解放
*持続不可能な生産・消費・廃棄構造の改革と廃止
*核兵器の廃絶、軍事支出の大幅な削減、軍事同盟の解消

 以上の諸条件を応用する具体例をあげると、飢餓や貧困は「長寿と健康な生活の確保」、「発展途上国の貧困の根絶」にはほど遠い状況で、知足を実践しなければならい段階に至ってはいない。だから飢餓や貧困に苦しむ人々に知足を強いるのは、見当違いである。

 一方、知足の実践が必要不可欠なのは米日欧の先進諸国である。米国に象徴されるように「いのちの尊重」を無視して、軍事力による殺戮を続けるのは、犯罪そのものの貪欲である。
 「経済成長それ自体を目標にする呪縛からの解放」、「持続不可能な生産・消費・廃棄構造の改革と廃止」、「核兵器の廃絶、軍事支出の大幅な削減、軍事同盟の解消」という条件のいずれにも不熱心なのが特に日米である。貪欲そのものであり、時代の要請から大きくずれている。日米が世界の中で孤立しつつある背景には根深いものがあるといわなければならない。
(以上、仏教経済塾への掲載に当たって説明に加筆補正した)


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コメント
この記事へのコメント
知足の日本モデルを
知足という日本に昔からある考え方を、 貪欲全盛の今こそ、次代を担う若者達に広めたいですね。

やがて憲法9条も改悪し、正式な軍隊を持ち、「世界の中の日米軍事同盟」の一翼を担って海外派兵も辞さない方針を貫くなら、日本もまた世界の中で孤立してしまうでしょう。
米国が今その方向に突っ走っているように。
安原さんの答えの通り、「これをどう避けるか」こそが、現在の大きな課題だと、私も思います。

「概して女子学生の感想文に、未来に生きる意欲を感じさせるものが多かった」。したがって、「21世紀は女性の時代」という印象を抱かれた安原さんの気持ち、よく分かります。

これからも「大方の予測を超えるスピードで、歴史が望ましい方向に激動」していくかと思うと、希望と勇気が湧きます。「ベルリンの壁」だけではなく、「幕藩体制崩壊」も「平和憲法」誕生もそうでした。

仏教経済思想が、「女性が子どもを産み、育てることは、女性にとって誇るべき偉大な仕事である」と理解しているなんて、非常に嬉しいことです。
また、「仏教は、男女平等の原則を堅持し、女性の社会進出も是認し、歓迎する。さらに夫婦そろって子育てに取り組むことも重要だと考える。しかし他方で、男女それぞれの特性、差異をも重視する」という部分にも、大いに共鳴致します。
「自己決定権は夫婦にあり、結果として人口減少となっても、それを問題視するのはおかしい」という観点にも、同感です。

「日本としては率先垂範を実践すべきで、貪欲から知足への大転換の日本モデルをつくりたい。それを日本の責務と考えたい」
たしかに日本が中国・インドに先駆けて、知足のモデルを示せたらいいですね。
「貪欲なブッシュ政権の面々に比べ、知足、簡素を尊び、実践する市民レベルの消費行動が米国内で静かに広がりつつある」とは、米国内の新しい変化で、注目に値します。
2007/02/28(水) 10:26:54 | URL | M.T. #-[ 編集]
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