「もっともっと欲しい」の貪欲の経済から、「足るを知る」知足の経済へ。さらにいのちを尊重する「持続の経済」へ。日本は幸せをとりもどすことができるでしょうか、考え、提言し、みなさんと語り合いたいと思います。(京都・龍安寺の石庭)
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「国民総幸福」の国・ブータン
〈折々のつぶやき〉18

 安原和雄
 このごろ想うこと、感じたこと、ささやかに実践していること―などを気の向くままに記していきたい。〈折々のつぶやき〉18回目。(06年6月25日掲載)

 毎日新聞の長期連載企画「縦並び社会」はなかなかの力作揃いである。特に第4部・海外の現場から⑧(2006年6月23日付)に注目した。題して〈「国民総幸福」の国〉である。この「幸せ」を売り物にしている国は、ヒマラヤ山脈東部に位置し、九州ほどの広さに約70万人が住み、農林業、電力を主産業とする小国・ブータン王国である。

 まず興味深い事実、データを以下にいくつか紹介したい。
*ブータンの首都で旅行代理店に勤務するDさん(31歳、家庭は妻と子ども2人)の月収は日本円に換算して約2万5000円の中流家庭。国民の平均年収は約8万3600円で、日本の約50分の1にすぎない。
*貧富の差はあるが、日本のようなホームレスはいない。
*医療費は全員無料で、国王も貧しい人も同じ医療を受けられる。ICU(集中治療室)を備える国立病院をはじめ全国に2000の医療機関がある。
*教育では日本の高校に相当する学校を卒業するまで学費は無料。
*政府の05年の調査では97%の人が「とても幸せ」「幸せ」と答えた。

 国、社会として目指している目標がこれまたユニークである。30年前、現国王がGNH(Gross National Happiness =国民総幸福)を国の新しい目標に掲げた。日本などのようなGNP(Gross National Product=国民総生産)で示される経済成長主義よりも「国民の幸せ」を重視し、その実現を追求してきた。その2本柱が教育と医療の無料制度である。

 なるほど所得水準は高いが、拝金主義(拝金教という一種の宗教ともいえる)が横行する中で国民の多くが忙しげに立ち回り、サラリーマンの大半は仕事上のストレスを感じている。失業者も多く、自殺者は年間3万人を超え、凶悪犯罪が日常茶飯事で、ゆとり・安心・安全とは無縁の社会に落ちぶれている。消費税引き上げ論もにぎやかであり、医療費など国民の負担はいよいよ重くなるばかりという国、その一方で、改憲派は平和共存権をうたう憲法前文と、戦力不保持と交戦権否認の憲法9条を改悪し、米国の世界規模での武力行使に加担しようと目論んでいる国―そういう大国・日本と違って、小国・ブータンはいかにも牧歌的風景を連想させる。

 しかしそのブータンも格差と変化の波に洗われつつある。その背景となっているのが急激なグローバリゼーション、情報化そして民主化であるらしい。

 国是の「GNH=国民総幸福」はどこへ行くのか? 腰砕けになるのだろうか。そうではないらしい。その答えは、「GNHの追求」を国の責務として、医療と教育の無料制度は今後も堅持すること―これがこの小国の決意である。

 「カネ、カネ」の経済大国・日本と「幸せ、幸せ」の小国・ブータン―あなたならどちらを選ぶか? やはりカネ? それとも幸せ? いや、カネも幸せも、というのは貪欲(どんよく)というものであり、それでは神仏による罰(ばち)があたる。欲張っては身の破滅を招く。

 06年9月で任期いっぱいとなる小泉政権の次の新しい首相選びは、実は我らがニッポン国の舵取りをどうするか、その選択と無関係ではない。深く深くかかわっている。海外の現場からの記者レポートを読みながら、私はそう考える。


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コメント
この記事へのコメント
国民総幸福にはわけがある
地図で見るとヒマラヤ山脈の南斜面に張り付いているような辺鄙な所にある小国ブータンに、普段、注目をしていなかったので、この記事を読んで、へー、そうだったのか」と、眼を開かせてもらったような感じがします。触発されたついでに、外務省のHPでブータンの基本的なデータを調べると、
人口:約65.8万人(2000年、ブータン政府資料)
外交基本方針:非同盟中立政策と善隣友好外交。
軍事予算:約9.3百万米ドル(2001年)
とありました。自然に、私たちの国と比較して見たくなり、最近の為替レート(1ドル=116円)を使って、ざっと比較してみました。
日本の人口(1.3億人)と防衛関係予算(5兆円/年)とで、毎年の一人当たりの軍事費を比較してみると、なんと、
日本の軍事費/人=38,462円
(米軍駐留経費への思い遣り予算不含)
に対して、
ブータンの軍事費/人=1,640円
となりました。すなわち、ブータンの国民一人当たりの軍事費は、日本のそれの約23.5分の一(=約4%)になります。高校までの教育費や医療費が無料になるには、ちゃんとそれなりのわけがあるということ。
それに、外交の基本方針も、日本とは大違いです。まさに、「我らがニッポン国の舵取りをどうするか」です。もうそろそろ、私たちは、政治を「お上(政治家)」に任せっぱなしする習慣を卒業しても良い時代ではないでしょうか。
2006/06/27(火) 17:06:04 | URL | S.O. #-[ 編集]
小国の魅力
S.O.さん、新しい問題提起を兼ねたコメントに教えられました。

ブータンの外交政策は非同盟中立・善隣友好だそうで、一方、日本、米国は日米安保・軍事同盟政策による軍事力依存症という深刻な病にかかっています。ブータンとは180度異なっています。
国民1人あたりの軍事予算ではブータンは、日本のそれの約23.5分の1(=約4%)にすぎない。
だからこそ高校までの教育費や国民医療費を無料にできるのだ、というご指摘は重要です。

ここが巨額の財政資金を軍事費という浪費に注ぎ込み、その故に多くの国民の生活を犠牲にする大国とは質的に違う点です。
これは軍隊を捨てた国・コスタリカ(中米の小国)ととてもよく似ています。
ブータン、コスタリカともに「小国の英知そして魅力」というべきです。

大国はいずれも経済成長主義にこだわっています。日米中などが、その典型で、資源エネルギーの有限性を無視して、傲慢・貪欲そのものの振る舞いようです。
一方、小国は経済成長主義にこだわらず、資源エネルギーを大切に扱う。傲慢・貪欲が破滅を招くことを察知しているためではないでしょうか。これも小国の英知として学びたいところです。

大国時代よ、さようなら! 小国時代よ、こんにちは!―へと歴史は急速に動きつつあるといえるのではないか。寝ても覚めてもそう想う昨今です。
2006/06/28(水) 15:08:39 | URL | 安原和雄 #-[ 編集]
ブータンについては、私も注目していました。ドキュメンタリーで取り上げられるブータン像は、常に素晴らしい国でとにかくいいことづくめのイメージだったのですが、先日初めてブータンのネガティブかつリアルな側面について知りました。こちらのリンクで詳しい説明がなされています。
http://www.ne.jp/asahi/jun/icons/bhutan/

一見して平和的な状況を作り出すために、一部(しかも全体の5分の1も)の国民の存在を犠牲にしているということは、本当の平和とは言えないのではないでしょうか。

これからのブータンには、「国民総幸福」というコンセプトを本当の意味で実現して、ゴールを見失った先進国の真のお手本になってほしいと望みます。
2006/07/07(金) 19:05:05 | URL | marujun #e0p7.LDY[ 編集]
ブータンの光と影
marujunさん、有益なご指摘をありがとう。
早速、ブータンのネガティブな面をリンクから勉強しました。こういう側面から目をそらしてはいけません。たしかに本当の平和あるいは幸福とは言いにくいですね。

ただ物事はつねに二面性をもっております。
光に影、表に裏、長所に短所、善に悪、幸福に不幸―がそれぞれつきまとっているように、現実は一筋縄では対応できない二面性を抱える矛盾そのものといえます。

あの軍隊を捨てた国、非武装中立の国コスタリカにしても、非暴力の影に暴力があります。
米国のイラク攻撃に賛成する「有志連合」リストにコスタリカ大統領が名乗りをあげました。
これに積極果敢な一人の法学部大学生が違憲訴訟を起こして結局、勝訴して、有志連合リストからコスタリカの国名を削除させました。
このように復元力があるところが、いかにもコスタリカらしいところといえるかもしれません。

問題は複雑な矛盾体の中からどういう特質を引き出すかです。いいかえれば学ぶべき特質は何か、を明確に認識することです。
それがブータンの場合は、経済成長主義を捨てた「国民総幸福の国」という目標であり、国是であると理解できるわけです。

ただしあくまで目標ですから、まだ未完成であり、追求の途上にあるということなのでしょう。
日本のように相変わらず陳腐な経済成長主義の旗を振り続けるのか、それとも異質の目標を掲げるのか、その選択のありようをブータンという小国から学ぶことはできないか―ここが大事な点ではないかという気がしています。

ともかく一つの盲点を衝いていただいて、思考の幅が少し広がったような感覚があります。
2006/07/08(土) 22:40:37 | URL | 安原和雄 #-[ 編集]
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2011/10/02(日) 12:45:39 | | #[ 編集]
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