「もっともっと欲しい」の貪欲の経済から、「足るを知る」知足の経済へ。さらにいのちを尊重する「持続の経済」へ。日本は幸せをとりもどすことができるでしょうか、考え、提言し、みなさんと語り合いたいと思います。(京都・龍安寺の石庭)
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TPP参加に高まる「反対の声」
日米密約説も飛び交うその舞台裏

安原和雄
 安倍晋三首相がTPP交渉参加を表明して以来、参加是非論が活発になってきている。首相は「TPPはアジア太平洋の繁栄を約束する枠組みだ。日本は世界第三位の経済大国。必ずルール作りをリードできる」と高姿勢である。しかしそれほど楽観できるのか。
舞台裏では実施のための日米密約説も飛び交っている。日本国のリーダーである首相が乗り気であれば、ここではむしろ反対論を追跡してみたい。その反対論もなかなか意気盛んで、賛成論よりもむしろ筋が通っている。いずれにしても一国の命運に関わるテーマとはいえないか。(2013年3月23日掲載。公共空間「ちきゅう座」、インターネット新聞「日刊ベリタ」に転載)

 以下、多様な分野から反対意見を中心に紹介する。

(1)Eメールで伝えられた反対意見
 私(安原)あてに届いたあるEメールは「ほんまにTPPに参加してもえぇの?」と題して次のように批判している。 

 首相訪米後、日本がTPP(環太平洋経済連携協定)に参加することが既定路線であるかのような報道が相次いでいる。私たちの暮らし、社会、そして世界に、大きな影響を及ぼすTPPを、農産物の関税の問題と矮小化し、その例外をオバマ大統領に認めてもらったとして、陳腐な共同声明を曲解しながら、マス・メディアの大本営発表が続いている。
 TPPってほんまにそれだけのこと?
安倍訪米って、誰にとって成果があったん?
私たちの将来は? 日本の未来は? 世界への影響は?

<安原の短評> 群を抜いている視点
 文章のスタイルから見て関西の人らしいが、それはさておいて、実に広い視点からTPPを捉えようとしているところが気に入った。「マス・メディアの大本営発表」という皮肉もうなずかせるものがある。
 末尾の「私たちの将来は? 日本の未来は? 世界への影響は?」は「私」、「日本」、「世界」にとってのTPPという発想であり、その視点は群を抜いている。問題はそれぞれにどう肉付けしていくかである。

(2)朝日新聞の「読者の声」から
「読者の声」(介護職 荻野直人=仙台市、3月22日付)は「TPPはブロック経済では?」という見出しで伝えている。その趣旨は以下の通り。

 TPPについては「安価な外国産品の輸入によって国内の農業が崩壊してしまうのではないか」、「国民皆保険制度がなくなってしまうのではないか」などの懸念が表明されている。この懸念は根拠があると思う。
 ただそれ以前に問いただすべきことがある。「TPPによって自由貿易が拡大する」という推進派の主張についてである。TPPは果たして自由貿易といえるのか。多国間による貿易協定は、その域内での貿易自由度は増すが、それはあくまでも域内の範囲に限られる。TPPは、参加する国としない国という新たな境界を生むことになり、それはブロック経済圏ではないか。

<安原の短評> 「ブロック経済圏」と日米密約
 ブロック経済圏の形成へ、という指摘は見逃せない。毎日新聞(3月22日付夕刊)によると、自民党の実力者、野中広務さん(官房長官、自民党幹事長を歴任)はTPPへの交渉参加についてこう語っている。
 「農業、水産業、医療などさまざまな分野で、本当に日本の主張が通るのか。実際には、例外のない関税撤廃を受け入れる約束が米国との間ですでにできているのではないか。参院選に影響が出るため明らかにしないのではないか」と。これは米国主導のブロック経済圏形成へ、という日米密約説を示唆している。密約説は十分あり得る話である。

(3)官邸前アクションによる抗議
 2013年3月15日に実施された「STOP TPP!! 官邸前アクション」は以下のような抗議文を採択した。 

 <安倍首相のTPP交渉参加表明に最大の怒りをもって抗議する>
 2013年3月15日午後6時、安倍首相は記者会見にて「TPP交渉参加」を表明した。多くの反対の声を裏切り、説明責任もまったく十分に果たさない中の参加表明だ。
 交渉に遅れて参加する国が圧倒的に不利な条件を飲まなければ交渉に参加できない、ということは明白である。にもかかわらず、安倍首相と自民党政権は、日本にとって侮辱的であり、不平等・不正義である条件を受け入れ、国を売り渡してもいいと判断したのだ。
 以下、私たちはすべての力を振り絞って猛抗議する。

*アメリカや日本の多国籍大企業の利益のために、国民のいのちとくらし、雇用も地域も犠牲にするTPPへの参加は、絶対に許されるものではない。
*安倍首相の参加表明は、幾重にも国民を愚弄している。そもそも公約したことを「公約ではない」と言い逃れ、影響試算を示して国民的な論議に付すと言いながら、参加表明後に影響試算を示すなど、国民を馬鹿にするにもほどがある。
*私たちは、今回の参加表明に当たっては、まだまだ国民に公表されていない日米の「合意」などが存在していると確信している。私たちはこのような非民主的で反国民的な行為を許すわけにはいかない。
*私たちは、TPPの危険性を国民と共有できるようさらに運動を広げるとともに、参加表明に至ったさまざまな非民主的な行為の暴露、さらには参議院選挙での国民的な審判も通して、安倍首相の参加表明を撤回させることをめざす。

<安原の短評> 「平成の井伊直弼」の運命は?
 Eメール上に流布している【緊急号外】は次のように示唆している。「井伊直弼は殺され、吉田茂は生き延びた。安倍晋三はどうなるだろうか」と。さらに「第三の開国」たるTPPは、「神聖不可侵」の「戦後国体」の如き日米安保体制の上に、米国の権力と資本にとってさらに「都合のよい国」「使い勝手のよい国」に日本を改造するための究極の不平等条約である、と。
 「平成の井伊直弼」の運命は如何に?という問いかけと受け止めたい。

(4)米、豪、NZ、日本の労働組合 連携強め交渉に反対
3月15日上記4カ国の労働組合が連携を強め、反対運動に乗り出している。

 TPP交渉に参加する米国やオーストラリア、ニュージーランドと日本の労働組合が、TPP交渉に反対する国際的な連携を強化する。交渉の内容が秘密にされていることや、大企業と投資家の利益を重視していることなどを問題視。4月10日には、日本の交渉参加に反対する米国の労働組合の呼び掛けで各国代表がワシントンで会合を開き、運動方針を協議する予定。交渉を主導する米国の政治家に、TPPの問題点への理解を促すため要請活動も行う。

 連携するのは、以下の労働組合である。
*オバマ米大統領と民主党の最大級の支持団体で1200万人以上が加盟する米国労働総同盟・産業別労働組合会議
*30万人が加盟するニュージーランド労働組合評議会
*オーストラリアのギラード首相の支持団体で200万人が加盟する同国労働組合評議会
*中小企業を中心に120万人が加盟する日本の全国労働組合総連合(全労連)―など。

 情報を収集・共有し発信、政府への働き掛けなども強化する。交渉に参加するカナダやペルー、チリ、メキシコの労働組合にも連携を求める。
 運動方針を協議するほか、5月の交渉会合では共同声明を出す方向で調整中だ。

 TPP交渉に反対するのは、労働者の権利を保護している各国の規制が緩和されたり、強化しにくくなったりすることへの懸念があるためだ。また日本が交渉に参加する可能性が出てきたため、日本の輸出攻勢で雇用が奪われるとの危機感も強い。貿易立国のニュージーランドとオーストラリアでは労働組合も自由貿易を推進しており、TPPに反対するのは異例のこと。極端な規制緩和を推し進めることに異議を申し立てているのだ。

<安原の短評> 極端な規制緩和に異議
 ニュージーランドやオーストラリアの労働組合は本来、自由貿易推進派であり、TPPには反対ではないはずである。ところがその労働組合までが反対派に転じたのは、TPPが究極の規制緩和を目指す装置だからだ。通常なら味方であるはずの勢力まで異議申し立て派に追い込むとは、TPPはよほどの曲者であるに違いない。

(5)日本農業新聞の報道=市民の怒り さらに沸騰 
 日本農業新聞(3月16日付)は「市民の怒り さらに沸騰 議員会館前などで猛抗議」と以下のように報じた。

 草の根の反対運動を続けてきた市民らは、東京・永田町で安倍首相会見のテレビ中継を注視。午後6時過ぎ、参加表明が発表されたとたん、深いため息が漏れた。涙を流してテレビをにらみつける女性や「ふざけるな」と机をたたく人もいた。市民は一様に「売国行為」と強い口調で批判を繰り返した。
 首相会見後、反対運動実行委員会は緊急声明を発表。「最大の怒り。多くの反対の声に対し、十分な説明責任を果たさず、全ての力を振り絞って猛抗議する」などと語気を強めた。農業だけの問題として矮小化した大手メディアの責任にも言及。国民の大半がTPPの本質を知らないことに、強い危機感を示した。

 全国食健連の坂口正明事務局長は「安倍首相は根拠も示さずに聖域を守ると言って、自らの主張を繰り返していた。絶対に諦めず、反対の声を上げ続ける」と決意を表明した。都内で料理教室を主宰する安田美絵さんも「首相の参加表明は国民を愚弄(ぐろう)しているとしか言えない。これまでの反対運動は決して無駄ではなく、今後も絶対に入ってはいけないと多くの人に全力で伝える」と主張した。
 プラカードなどを手に若者も猛抗議した。東京都調布市の中学3年生、山﨑成瑠君(15)は「断固反対と言って当選した政治家は恥ずかしくないのか。大人の世界は汚い。僕たちの未来を奪う行為だ」と声を張り上げた。埼玉県日高市の龍門永さん(23)も「首相はTPPの農業以外の危険性を隠して参加表明した。なぜ、こんなおかしいことがまかり通るんだ」と声を荒げた。

<安原の短評>「大人の世界は汚い」とは?
 最近のデモや反対運動には女性や若者たちの姿が目立つ。その若者の一人、中学3年生は、「大人の世界は汚い。僕たちの未来を奪う行為だ」と怒っている。その心情は理解できる。ただここで指摘したいのは、「僕たちの未来」を創っていくのは、ほかならぬ若い君たち自身だということ。新しい未来を築き上げていく一翼を担うことは、魅力尽きない人生行脚とはいえないか。

(6)東京新聞経済部長の警告
 富田光・経済部長は東京新聞(3月16日付)で「経済の枠超え、影響」と題して、以下のようにTPP実施に警告している。その大要は次の通り。

日本は今、TPPという大きい門の前に立っている。門の奥に星条旗がはためいている。門柱には「経済連携」と書かれている。しかし、この文字はTPPの上っ面を表しているにすぎない。TPPは、主に関税を下げることを目指していた、過去の貿易交渉とは完全に異質だ。
 生産する、売る、買う、食べる、移動する、病気を治療する、遊ぶ、学ぶ、保険に入る・・・。関連する対象分野を挙げればキリがない。交渉妥結後、国会が批准すれば人々の暮らしの各ページに影響が及ぶ。海外からの訴訟で国内ルールが変わる可能性さえある。門の中に入れば、経済の枠組みをはるかに超え、社会が構造ごと大転換しかねない。これがTPPの実像だろう。

 政府は、環太平洋の各国と連携することで、国益が得られるとプラス面を強調する。実際、参加を機に、新たなビジネスを紡ぎ出す企業や、海外進出をとげる農家が出るかもしれない。消費の仕組みや意識が変わることで、社会の質を高める起爆剤となりうる力もTPPは併せ持つ。
 しかし現実の交渉では、「既に現在の参加国間で合意した条文は原則として受け入れ、再交渉は要求できない」「交渉を打ち切る権利は(すでに交渉を開始した)九カ国のみにある」との条件が付けられていた。
 こうした肝心の情報を政府は開示してこなかった。米国が厳しい姿勢で交渉に臨むことが確実な中、これまで何が決められたのか国民に正確に伝えなければ、議論は到底尽くせない。TPPの交渉は、民主主義国家としてのあり方を鍛える、試練の場でもある。

<安原の短評> 民主国家としての試練の場
 末尾の「TPPの交渉は、民主主義国家としてのあり方を鍛える、試練の場でもある」という指摘は見逃せない。なぜTPP交渉を単に通商、貿易交渉としてではなく、民主主義の視野で捉えるのか。それは日米間の密約、国民不在の日米交渉、あるいは対米従属下での外交など、従来の「非民主的な交渉」という惰性を克服する必要があるからだろう。
 この視点は重要である。しかし日米安保体制下で多数の米軍基地が日本列島上に存在する現状では、日本が対米民主主義を貫くことがどこまで可能だろうか。疑問は消えない。


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TPPによる壊滅的被害
しんぶん赤旗(3月25日付)は、TPPによる被害について「農林水産に壊滅的被害ー地域経済も深刻」と報じている。これは「14道県試算」によるもので、例えば北海道の被害は次のようである。
210%の食料自給率が89%へと激減、農林水産業全体の生産への影響は4762億円で、農家は2・3万戸も減少し、半減となる。さらに北海道の地域経済として7383億円減となるほか、11万2千人の雇用が失われる。

県によっては農林水産業が持つ「多面的機能」(=水利、自然環境保護、観光資源などの役割)が影響を受ける損失額を試算している。その額は島根県644億円、山口県473億円、宮崎県266億円など。
2013/03/25(月) 16:37:29 | URL | 高岡 雄 #-[ 編集]
TPPに関し、多くのメディアが推進させようとしているのを見ると、戦前を思い出します。
学者の反対意見もあまり聞きません。
今後、どのような道を我が国は辿るのか心配です。
2013/03/26(火) 20:48:48 | URL | 赤坂亭風月 #-[ 編集]
TPP「ISD条項」について
朝日新聞投書欄「声」(3月26日付)に<TPP「ISD条項」気がかり(無職 松宮光興 73歳)>が掲載されている。安原の仏教経済塾の上述記事<TPP参加に高まる「反対の声」>ではこのテーマが欠落しているので、「声」で補足しておきたい。
その大要は以下の通り。

TPPへの疑問の声が連日のように掲載されている。本紙世論調査によると、安倍首相の交渉参加表明を71%が「評価する」と回答したそうだが、本当だろうか。
メディア報道が、農業自由化や関税撤廃という問題に集中しているのが一因だろうが、私は「ISD」(投資家と国家の紛争解決)条項」の行方が一番気になっている。
外国企業が進出先の国で「不当な差別を受けた」と提訴できる仕組みだ。裁定を下すのは「国際的な第三者機関」とされるが、実際には世界銀行傘下の国際投資紛争解決センターへの提訴が多い。
これまでISD条項が入った米国とカナダ、メキシコの北米自由貿易協定では、米企業による訴えが多発、カナダやメキシコ政府が多額の賠償金を払った例はあるが、米政府がカナダ、メキシコの企業に払った例はないという。
オーストラリアがISD条項には反対している。安倍政権も受け入れない姿勢だが、「後発参加国」として発言権に不安がある。行方を注視したい。

2013/03/27(水) 12:03:16 | URL | 仏教経済塾亭主 #-[ 編集]
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