「もっともっと欲しい」の貪欲の経済から、「足るを知る」知足の経済へ。さらにいのちを尊重する「持続の経済」へ。日本は幸せをとりもどすことができるでしょうか、考え、提言し、みなさんと語り合いたいと思います。(京都・龍安寺の石庭)
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アイデンティティーってなに? 
〈折々のつぶやき〉45

安原和雄
 想うこと、感じたこと、ささやかに実践していること―などを気の向くままに〈折々のつぶやき〉として記していきます。今回の〈つぶやき〉は45回目。題して「アイデンティティーってなに?」です。(08年12月22日掲載、公共空間「ちきゅう座」に転載)

▽「みんな違っていて当然」 

 一つの含蓄に富んだ文章(要旨)を以下に紹介する。その見出しは「みんな違っていて当然」。

 アイデンティティー(ID・直訳すると「存在証明」)。その人がどんな人間なのか、自分が何者なのかを意味するこの言葉。私たち(日本人)にとって日常的ではない。しかしアメリカにいると毎日のようにIDという単語を耳にする。
 その理由をはっきり感じるのが地下鉄に乗ったときである。向かいの列に座っている人全員の肌の色が違う。着ているものの傾向も全く違う。どこの国の出身だろう? IDカードを見なくてはわからない。

 自分はどんな傾向があってどう生きるか。そのようなことを考える下地は、環境によってはぐくまれるのかもしれない。常にIDカードを持たないとものごとが進まない環境にいると、自分を客観的に観察し、自分と対話するチャンスも増える。

 地下鉄に乗っても店で買い物をしても、みな肌の色、体形がまちまちだから、自分と他者がはっきり違い、人それぞれであるということがいやでも認識される。
 きちんと話さないとコミュニケーションがとれないな、という覚悟もできるし、人は自分と同じようには考えなくて当たり前ということも自然に体でわかってくる。

 日本でストレスの原因として多いのは「相手が思い通りになってくれない」というものだ。自分の脚本を相手に押しつけてしまう。相手は自分と同じように考えるものと思っていると、ストレスが生まれる。相手は自分と違って当然という認識は、こうしたストレスを軽くするかも。
 (毎日新聞08年12月14日付「日曜くらぶ」― 心療内科医・海原純子さんの「心のサプリ/一日一粒」から)

▽日本人のアイデンティティー(1)― まだ馴染みが薄い

 私(安原)はこの「心のサプリ」の愛読者の一人である。「なるほど」と思わずうなずき、膝を叩くことが多い。とくに今回の記事は我々日本人にとって考えさせられるテーマである。たしかに「アイデンティティー」(英語はIdentity)は日常用語としてはまだ馴染みが薄い。
 筆者の海原さんも体験談を告白している。「以前雑誌に原稿を書いていてアイデンティティーという言葉を使ったら、知らない人もいるので別の言葉にしてくださいと言われた」と。

 なぜアイデンティティーが日常用語になっていないのか。日本語の一つの辞書を引くと、つぎの2つの意味が載っている。
①自己が環境や時間の変化にかかわらず、連続する同一のものであること。主体性。自己同一性。
②本人にまちがいないこと。また身分証明。

 ②の身分証明は、海外旅行の際に不可欠のパスポート(旅券)がその具体例である。パスポートがなければ、自分が日本人の何者であるかを証明することができない。もし海外で紛失すれば、パスポートを再発行して貰う以外に帰国できる手段はない。海外旅行者が増えている今日、このアイデンティティーは分かりやすい。
 問題は①の主体性、あるいは自己同一性といわれるアイデンティティーである。 最近、研究会での議論などでは結構使われるようになってきたが、それでもまだ一般化してはいない。海原さんの表現を借りれば、「自分を客観的に観察し、自分と対話する」という習慣が身についていないからだろう。

 日本社会では例えば「他社並み」「横並び」「お隣さんと同じで」という感覚が通用してきた。いいかえれば主体性、個性は無用だった。個性的な主体性を発揮すれば、かえって波風が立ちすぎる。
しかし今日の国際化時代にはこの感覚を欧米人に理解して貰うのはむずかしい。なぜなら彼らは「みんな違って当然」という感覚だからである。日本人としてのアイデンティティー(自己同一性)は「没個性で皆同じ」と言ったら「恐ろしい集団」と誤解されかねない。
 にもかかわらず相も変わらず、海原さんが指摘しているように「相手も自分と同じように考えるものと思っている」のが日本人の多数派である。議論していて、相手の主張に同意しないと、不機嫌になる人がまだ多い。「自分を客観的に観察する」ことが不得手で、「みんな違っていて当然」という発想に頭を切り替えることが難しいのだろう。自慢できる話ではない。

▽日本人のアイデンティティー(2)― 日本の宝・憲法9条

 以上は日本人一人ひとりにとってのアイデンティティー論といえる。俗に言う「人それぞれ、人生いろいろだよ」説に通じるところがある。ただここでアイデンティティー論が終わったのではいささか物足りない。「日本人」あるいは「日本」のアイデンティティーは何か、いいかえれば日本にあって、外国にないもので、日本が海外に誇りにすることができるものは何か、それを日本(人)の新しいアイデンティティーと呼ぶこともできるのではないか。

私は、そういうアイデンティティーとして憲法9条を挙げたい。9条(戦争放棄、軍備及び交戦権の否認)の理念は世界に誇るべき日本の宝といっていい。日本の宝として今後大いに育てていくべき責務がある。ところが残念なことに日米安保条約に基づく日米安保体制のために9条の理念は骨抜きになっており、日本は世界でも有数の軍事強国の地位にのし上がっている。現実は9条の「軍備の否認」、つまり「非武装」という理念から遠くかけ離れている。
世界には非武装国は27カ国(いずれも小国)もある(前田 朗著『軍隊のない国家』日本評論社刊)。これに対し日本は米国に次ぐ世界第2位の経済大国(もっとも最近はかなり脆弱な経済大国に転落しているが)であり、しかもかつての侵略戦争の反省に立って憲法理念として非武装をうたっているところがユニークなのである。

 つぎのような見方も一部にある。憲法9条は敗戦直後に米占領軍によって押しつけられたものであり、軍隊を正式に保有できるように9条を改定すべきだという意見がそれである。この認識は歴史的事実に反する。多くの国民意志を反映する形で9条は憲法に盛り込まれた。
 ただここでは頭の体操として100歩譲って、国民の意志とは無関係に占領軍によって9条が出来上がったと仮定しよう。仮にそうだとしても非武装の理念を放棄する理由にはならない。なぜなのか。

 考えてもみよう。地球人口66億人のうち自分の意志でこの世に生を享(う)けた者が一人として存在するだろうか。すべての人が自己の意志とは無関係に、父母のある行為の結果として命をいただいたのである。だからといって、それを理由に命を粗末にしなければならいと考える者はいない。命は大切にしたいと考えている。
 それと同じように憲法9条は「日本の宝」― いまでは世界の心ある人々から高く評価されており、「世界の宝」に格上げされてきた ― ともいえる貴重な存在なのだから、大切に育てようではないか。その努力を怠っては、子々孫々に申し訳が立たない。

考えてみれば、日本人には仏教と農耕民族としての歴史的伝統があり、外国の狩猟民族と違って争いを好まないところがある。最近は日本列島上に暴力沙汰があふれているが、これは本来の姿ではないと信じたい。憲法9条の理念を大切に生かしていきたいと考える人々が増えて、「九条の会」が全国に現在7000以上も誕生しているのは、争いを好まないことの証左であろう。


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コメント
この記事へのコメント
憲法九条に関し、これは誇れるものです。
この頃、昭和十三年生まれの父自身が体験した赤坂での五月の空襲や戦争における話しを聞く機会が多く、それを実感します。

また、農耕文化についても、これがよく言われる集団主義に繋がり、和を乱さないことになっていると考えます。悪い面ばかりを主張する人もいますが、争わないという点では、優れているではないでしょうか。

個人的には、先生の言われる<「日本人」あるいは「日本」のアイデンティティーは何か、いいかえれば日本にあって、外国にないもので、日本が海外に誇りにすることができるものは何か>と問われた場合、まず浮かんで来たのは、古典芸能です。時代を越えてき分、我が国の伝統や先祖の思いが濃縮されている気がします。
2008/12/23(火) 21:16:07 | URL | 赤坂亭風月 #-[ 編集]
「日本の誇り」発見の旅
赤坂亭風月さん、コメントに感謝します。「なるほど」と思いながら読みました。
古典芸能もたしかにそうですね。能、歌舞伎、日本舞踊、落語などは日本が海外に誇りにすることができるものです。いまでは海外で相当注目されてもいます。さらに一つつけ加えれば、茶の湯も見落とせないように思います。

農耕文化には二面性があります。一つはご指摘の「集団主義としての和」です。これは争いを好まない点ではいいのですが、やや没個性的な側面があります。いい意味での自己主張が不足しています。
これからはもう一つ、「個性主義としての和」が重要であるような気がします。「みんな違っていて当然」という感覚を前提にした連帯主義とでも表現したらいいのでしょうか。これはいわゆる「日本的和」を21世紀の新時代にふさわしく発展させることを意味します。アイデンティティーといえども、時代とともに発展していくべきものではないでしょうか。
これからの時代には農業がきわめて重要になってきて、そこでは個性が求められているように思います。和を尊重しながら個性を発揮していくーこれはなかなかむずかしいテーマですが、追求してみるだけの価値はあります。

輸入品や輸入文化に振り回されるのは止めて、さらにお金に目を眩ませるのを自制して、日本のアイデンティティー発見の旅(思索としての)に出掛けるときだと思います。そうすることによって誇りを取り戻すときではないでしょうか。若い人が先頭に立って、やってみてはいかがですか。
2008/12/24(水) 11:03:06 | URL | 安原和雄 #-[ 編集]
日本のアイデンティティ発見の旅、私も探したいと考えています。
私が、江戸に触れ出したのは、十一年くらい前からです。
バブル崩壊後、世の中を見た時、西洋の学問である社会学よりも、我が国にはもっと別の視点での方が良いのではないかと思ったのが切っ掛けです。
それを知るため、古典芸能にも足を運び、年中行事の追体験などもしてみました。
結果、今では先人の知恵を応用したいと思っています。
それにより、先生の示された「個性主義としての和」も追求したいと感じています。

2008/12/24(水) 22:19:43 | URL | 赤坂亭風月 #-[ 編集]
「アイデンティティー探しの会」を
赤坂亭風月さん、日本のアイデンティティー発見の旅、大いに期待したいですね。
このままでは日本社会は骨のないグニャグニャの軟体動物のような存在になってしまいそうな懸念があります。

米国はオバマ次期大統領の登場で、どこまで変わるか、まだ未知数ですが、ブッシュ大統領路線とは異なる新時代の構築へ向けて恐らく努力していくのでしょう。EU(欧州連合)もそうだし、特に中南米諸国は最近の変化が顕著で、世界の導きの星になっていく可能性すらあります。
アフリカ諸国もそれなりに新たな模索を始めつつあります。東南アジア諸国もそうです。

このままでは日本のみが世界の流れから取り残される恐れさえあります。どうするか。今こそ若い人たちの出番です。貴君は、その資格十分とお見受けしました。
一人旅も結構ですが、できれば知人に呼びかけて「日本アイデンティティー探しの会」(仮称)でもつくってはいかがですか。ユニークな会になるような気がします。
2008/12/25(木) 16:20:04 | URL | 安原和雄 #-[ 編集]
交通事故死
立派なサイトでいつも参考にさせていただいております。
少し気になる数字があります。交通事故死者数が年々へり続け去年は5000人位ではなかったでしょうか。それに反比例して自殺者数は増え続けています。去年は34000人ぐらいでしょうか。しかし
これは政府のごまかしで、捜索願いや行方不明者数が10万以上ありますし、自殺を除く変死者数から勘案して自殺者は6万人くらいありそうです。(10万という人もいます。WHO方式で計算するとそうなるらしいです)交通安全対策には莫大な予算が投じられていると思いますが、故ありとしても一人で生を終えなければならない無念さは察するに余りあります。先生のようなお立場であれば公の方との交流もおありでしょうから是非自殺防止のためにお力添え願えれば幸いです。なんとしても多すぎます。



2009/06/07(日) 21:15:13 | URL | 矢谷弘幸 #pXHJnv0M[ 編集]
数字の幅について
矢谷弘幸様、貴重なコメントに感謝します。自殺者の数字に幅があるように、交通事故死者の数字も統計の取り方によって違ってきます。

交通事故死者数は警察庁の発表数字ではたしか5000人台前半の数字だったと思います。新聞に毎年発表される数字はこれです。
一方厚生労働省の数字もありますが、こちらは約6000人ではないかと思います。
どうしてこうも違うのか。警察庁はたしか事故後1週間以内に死亡した場合の数字です。一方厚生労働省の方はたしか事故後1か月以内に死亡した人を対象にしています。ですから厚生労働省のデータの方が多い数字になります。こちらのデータは新聞では報じられません。

いずれにしても私の感覚では、5000人にせよ、6000人にせよ、それだけの人が年間事故死していることに多くの人は無感覚になっているのではないか、という点を指摘することにあります。
お互いに「明日はわが身」とも言います。くれぐれもご自愛下さい。
2009/06/08(月) 17:46:40 | URL | 安原和雄 #-[ 編集]
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